吐露
傀儡呪詛師茅瀬遥は露鐘眞尋を愛している。それこそ死んでも離れず、彼女のためなら死んでもいいと願えるほどに。崇拝と慈愛と狂愛と親愛、害する感情のみを取り除いた彼の愛は深く、重く。
彼女のためだけに成り立っているように見えるそれは、その実自分のためであることが多くて。
彼女のために生きることが自分のために生きること。
彼女のために行動することが自分のために行動すること。
彼女のために死ぬことが自分のために死ぬこと。
欲も見えないそれは、いっそ狂気的なまでに愛だ。異常な量の愛で繋いで、無理やり小指に赤い糸を巻かせた。無意識のうちに巻かれた赤い糸はやがて全身を絡め取って、2人に隙間を許さない。
疑問に思わない彼女の視界を自身の手で覆って、甘言を吐く。何も恐れることはない、何も疑問に思うことはない、自分がいる、大丈夫だと。全幅の信頼を置いているからこそ彼女はそれに頷き、彼に身を受け渡す。
そんな構図ができたのは、一体いつからか。なんて、そんなことは知る由もないのだけれど。
「でもね、そんな聖人君子じゃないよ、俺」
「言ってしまえば眞尋以外はどうでもいい。一緒にいる彼らのことだって対して重く感じていない。」
「何より、彼らが死んでも悲しまないと思うよ」
「腹の中に溜めている感情は、彼らに対しては“無”そのものなんだから」
「本音を言えばね、眞尋は俺を見ていて欲しいんだ」
「俺だってもっと眞尋に近付きたいし、触れたい。限界ギリギリだとかそういうのじゃなくて、身体も心も全部。」
「いっそ全部を喰らいたい。あの子の持ち得る全てを掌に収めて、大事に大事に食べてしまいたい」
「眞尋そのものを、俺だけで染め上げたい」
「視界に誰も入れたくない。」
「誰も見ないで、誰とも関わらないで、誰のことも知らないでいて欲しい」
「眞尋の世界は、茅瀬遥だけでいいと思わせたいんだ」
「...なんて、ね。冗談だよ、冗談」
「今では彼らに対しても感情はあるし、眞尋に対してそんなこと思うわけないじゃない」
「眞尋はみんなと関わっていたいと思っているし、何よりもその方がずっと似合うからね」
「...え、本当に冗談か?」
「...さぁね」